大判例

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東京高等裁判所 平成5年(く)181号 決定

被告人 小池冬樹

〔抄 録〕

所論は、要するに、原決定は、被告人に対する保釈許可決定に関し、保釈保証金一五〇〇万円のうち一二〇〇万円については、被告人の母小池美年子、被告人の知人奥澤英理子両名提出の保証書をもってこれに代えることを許可したものであるが、本件詐欺の態様や公判の経過等からすると、一五〇〇万円のうち一二〇〇万円についてまで保証書による代納を許可するのでは被告人の罪証隠滅工作及び逃亡の防止にはならないこと、代納を許可された小池美年子及び奥澤英理子には「いつでもその保証金を納める」だけの資力がないことなどから、原決定は不当であり、その取消を求める、というのである。

一 記録によれば以下の事実を認められる。

1 被告人に対する勾留事実の要旨は、「被告人は、ラブリーウォール株式会社代表取締役であり、同社取締役小池俊輔、有限会社シー・エス販売株式会社代表取締役上田清と共謀のうえ、ラブリーウォールの資金繰りに窮し、ケイアミューズメントリース株式会社代表取締役鈴木喜八から、約束手形割引金名下に金員を騙取しようと企て、平成三年一二月四日ころ、鈴木に対し、真実は架空の工事であり、支払い期日に確実に決済される見込みもないのに、シー・エス販売が注文書でラブリーウォールが請負人となる「小俣アビタシオン新築工事」契約があり、シー・エス販売振出の約束手形二通(額面合計一億六〇〇〇万円)が工事代金として受領したもので確実に決済されるもののように装ってその割引を依頼し、鈴木をしてその旨誤信させ、同月五日及び同月一七日、同人から、合計一億四九九九万九二七九円を被告人名義の普通預金口座に振込送金させてこれを騙取した。」というものであり、原審において、その前後の時期における同一の被害者に対する同一態様の三件の手形割引金名下の詐欺事実(被害総額約二億二三〇〇万円)と併合審理されているところ、被告人は、捜査段階では全て自白していたが、公判段階では、外形的事実は認めるものの、小池俊輔との共謀及び犯意を否認しており、現在まで公判は第八回まで実施され、検察官申請の証拠は全て取調べを終え、弁護側立証の段階となっていること、

2 共犯とされる小池俊輔は、ラブリーウォールの創設者の一人で、被告人の父であり、本件について在宅起訴され、公判で被告人と同様に犯意等について否認したが、その後被告人とは分離して審理を受けていること、

3 ラブリーウォールは、被告人や小池俊輔のほか被告人の弟や妻が取締役に就任していた会社であって、平成四年六月に二六億円余りの負債を抱えて倒産し、被告人の所有(共有)する唯一の資産でありラブリーウォールが使用していた土地建物には同社の債務のために担保権が設定されており、ほかに被告人には資産はないこと、

4 被告人には、妻と小学生の子供二人がいるが、フィリピン人女性とも交際して同女との間に子供もいること、

右のような本件事案の罪質、態様、審理経過、被告人の身上、資産状態等によれば、被告人が本件につき共犯者らと通謀するなどして罪証を隠滅すると疑うに足りる相当の理由があり、また逃亡すると疑うに足りる相当な理由もあるというべきである。

二 次に本件原決定の経過をみると、原審は平成五年四月一七日保証金を一五〇〇万円として被告人に対する保釈許可を決定したが、保証金が納付されないままに推移し、同年七月一九日、新たに選任された現弁護人四名から同弁護人らを保証書提出者とする「保釈保証金納付方法の変更申請」書が提出され、同年八月一三日同弁護人らから小池美年子及び奥澤英理子を保証書提出者に変更する「保釈保証金納付方法の変更申請訂正申立書」が提出され、同月一七日、これを認容する原決定がなされている。

ところで、この間の保証金の金策等については、

1 ラブリーウォールが倒産し、被告人本人及び被告人の親族の経済的信用が失墜していることなどから、小池美年子が友人らから借り受けた三〇〇万円以上は用意が整わない状態にあること、

2 小池美年子は、被告人の実母であり、二筆の土地及び二棟の建物を所有しているが、その固定資産評価額が合計約四〇七万円程度であるのに、合計五一五〇万円の抵当権等が設定されており、かつ、同女は、平成四年六月に小池俊輔と離婚してからは知人宅に身を寄せ、スーパーでパート店員として生活を維持している状態であること、

3 奥澤英理子は、足利市本城三丁目三九〇五の七ニュートンビレッジ九〇三号室に居住し、愛人関係にあった小池俊輔と平成四年六月ころから同所で同棲する者で、同室を区分所有建物として所有しているものの、その固定資産評価は敷地権を含めても一〇〇〇万円未満であるのに、合計二一五〇万円の抵当権が設定されており、その代表取締役をしている株式会社イー・ディープランも営業不振であること、

などが認められる。

三 そうすると、被告人の逃亡及び罪証隠滅の防止のために、保証金一五〇〇万円のうち一二〇〇万円を小池美年子及び奥澤英理子提出の保証書を以て代えることは、右両名の資産・信用状況がいずれも「何時でもその保証金を納める」(刑訴規則八七条)ことのできる状態にはほど遠いといわざるを得ず、その身分関係も、小池美年子はともかく、奥澤英理子とは緊密とはいい難く、両名とも被告人の行動を監督できる状況にはないことなどからすると、被告人に対する保釈許可決定に関し、保釈保証金納付者及び納付方法を前示のように変更した原決定は、その裁量の範囲を越えた不当なものといわざるを得ない。

(小林 中野 小川)

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